楢山の家Rはリノベーションと表現するには物足りない気もする。大掛かりな改修であり基礎以外はほとんどの部分に手を加えたので原型がないかもしれないが、実はこの建物は一本の既存柱を軸に展開している。大空間はとれなかったが、その代わり陰と陽がゆるやかにつながる空間の光の分布は落ち著きがあって良いし、寄せられなかった柱を利用してリビングとダイニングをファイヤープレイスでうまく隔てている。室內の靜寂さは紛れもなく斷熱材がもたらす効用であり、サンルームやワインセラーも斷熱區畫出來るからこそ価値がある。冷水で冷やしたワインは乾燥が少なくパントリーと合わせて良好な保存が出來るはずだ。ヘリンボーンの床やリノリウムの壁、濃淡のある御影石など癖のある素材を組み合わせたが隨所に黒を入れて空間が緩まないようにまとめている。クライアントの趣味趣向が住まいに反映するのはいつも楽しい。象徴とは無縁だと思っていたが、インテリア含め一つ一つの様式を考えるのもまた楽しい作業だ。